2015年2月9日月曜日

thermaltake Pacificシリーズレビュー 1


 お久しぶりです。1月に入ってthermaltakeのDIY向けの水冷パーツが発売になりました。9月に水冷の実演イベントを行った際に使用していたパーツですので、発売までかなりかかりましたがひと通りのラインナップが揃って出てきました。ポンプやブロック、ラジエーターなどがセットになったモデルも出ていますが、各パーツは単品販売もしています。
 そこで今回はCPUブロックとラジエーターをお借りしましたので新水冷パーツのレビューをしてみたいと思います。まずはCPUブロックのレビューから始めます。

【thermaltake PacificW1】

PacificシリーズのCPU用水冷ブロックW1です。対応しているCPUは以下のとおりです。
Intel LGA 2011-3/2011/1366/1155/1156/1150/775
AMD FM2+/FM2/FM1/AM3+/AM3/AM2+/AM2
ひと通り最近のCPU網羅しているのでほぼどの環境でも搭載可能でしょう。
 材質は銅ベースにニッケルメッキが施されたもので、内部の0.15mmピッチのマイクロフィンが特徴のようです。
 フィッティング取付部はG1/4でネジが切ってありますので同規格の水冷用フィッティングは取り付け可能になっています。UNT2worksではKOOLANCEのシャットオフバルブQD3シリーズを取り付けて問題はありませんでした。

【開封&取付(LGA2011)レポ】


  
 パッケージ外観はよくあるCPUブロックのパッケージですね。メーカーロゴと製品名のシンプルなパッケージです。


 ブロック本体と各マウント用の固定ネジ、バックプレート、説明書、保証書が付属していました。


 各部品毎にアルファベットで区別して変わりやすくしてあります。他社製品だと部品のイメージ図で判断することが多いのでこういった部分はわかりやすくていいですね。

  Intel向けのマウンタが標準装備されています。AMDに装着する場合は同梱のAMD用マウンタと交換します。

 マザーボードに取り付けた状態。LGA2011はCPUクーラー固定用のバックプレートが標準で付属しており、ネジ穴もあるため、その他の水冷ブロックと同様にそこにネジを立てて上からつまみネジで締めて固定します。W1の特徴はその締め付けの際にバネを使わないことです。(他社ではバネ使うことがほとんど)四隅のマウンタが同様の機能をしていると伺いましたが、果たして。

【捕捉 LGA1150&1155取付】


 LGA1150や1155の環境では裏側からネジを立てて固定する方式を採用しています。他社だとバネを利用して最適なテンションをかける仕組みが多いですが、W1ではバネを採用しておりません。


 上記の用にプラの厚めワッシャーと手締の大きめのナットを使ってネジを固定した上に水冷ブロック&マウンタを載せ、上からそのマウンタを手締ネジとワッシャーで押さえつける構成になっています。

 水冷イベントをご覧になられた方がいればお気づきかと思いますが、イベント時ブロックがうまく固定できなかったのはこの構造が原因でした。 ワッシャーが薄く、ネジが締め切れないためブロックの固定がうまくできませんでした。
 製品版ではワッシャーを増やし対策をしているようですが、しっかり締めきれているか締めた段階では少し不安がある構造です。(実際に検証ができていませんのでこの辺りは後日フォローします) 取付の手間がLGA2011に較べてかかりますので是非次期モデルがあるようでしたらマウンタについては改善されたほうが良いかと思います。


【検証】


 今回の検証環境はvol.5のCPUブロック検証環境を引き継ぎまして以下の環境にて行います。

CPU    Intel Core i7-5960X Extreme Edition
GPU    EVGA GEFORCE GTX 750Ti
M/B    ASUS Rampage V Extreme
メモリー    Corsair Dominator Platinum CMD16GX4M4A2800C16
電源    Corsair AX1200
ファン    Noctua NF-F12 industrialPPC-3000 PWM
Radiator    Black Ice Nemesis 360GTS
Reservoir    XSPC D5 Dual Bay Reservoir V2
Pump    aquacomputer D5 pump motor with USB and aquabus interface
クーラント    aquacomputer Double Protect Ultra Blue
ファンコン    aquacomputer aquaero6 XT 

 負荷は定格時、4GHzオーバークロック時それぞれで、OCCTを30分回して最高温度とアイドル30分後の最低温度を計測しています。モニターはOpenHardwareMonitorを使いaquasuiteで取り込んでログを出力しています。水温は経路上に設置した水温計から同じくaquasuiteでログを取得しています。両方とも1sec間隔で記録しています。

 今回は比較対象用にEKWBのSupremacyEVOの計測値も載せておきます。他のvol.5のブロック類を検証した際と室温の差がありますので そのままでは過去のブロック類と比較しづらいかと思いましたのでSupremacyを基準にして相対的に他社製品と比較してください。

 

【計測結果:CPU温度は若干高めだが同価格帯としてはほぼ同等の性能】

 計測結果を見るとW1はSupremacyに比べると若干高めの温度で推移しています。水温の差は大きく変わりませんが温度の差が出ていますのでブロック単体の性能はEKのSupremacyの方が良いようです。ブロックの内部を見ると、W1はフィンピッチはかなり細かく作られていますがクーラントはフィッティング取付部から直接流れ込み出る仕組みになっています。Supremacyはブロックやプレートなどを用いて水流をコントロールしていますのでその構造の差が性能に出てきているかと思います。
 今回は計測していませんが同価格帯のswiftechのCPUブロックなどと似た感じの性能かとおもいます。

【まとめ:価格相応の性能、ただしマウンタは若干クセあり】

 価格はW1が6,980 円 (税抜)、Supremacyは11,655 円 (税抜)です。コストパフォーマンスを考えればW1は最安価格帯のブロックながらかなり健闘しているのではないでしょうか。
 ただ欠点を言えば利用者の多いLGA1150向けのマウンタの構造がやはり心配です。可能であれば今後改善型になることを期待したいです。 LGA2011については取付は用意ですがやはりバネ式固定でないのが気になります。CPUの冷却ができていたのでLGA2011環境での取付の問題はないと思います。
 水冷システムはトータルコストがどうしても高くなるのがネックです。コストを落としつつもそこそこ性能のブロックを使いたいということであれば良い選択肢になるかもしれません。他社の安いモデルは流通量が少ないこともあり、入手性が良くないこともありますが、今回のW1はthermaltake製ということもあり、他社モデルより入手性がよいことも期待できます。エントリー向けのセットも用意されていますので初めて水冷を使う方向けには悪くないのではないでしょうか。
 水冷業界は久しく新メーカーの参入がありませんでしたので今後もhermaltakeさんには新商品を継続的に開発していって頂き、活性化指定っていただけたらと思います。1ユーザーとして期待しています。

【次回のお知らせ】

  次のレビューは同時にリリースされたthermaltakeのラジエーター RL360をレビュー予定です。