2016年3月6日日曜日

POSEIDON 980Tiレビュー

水冷PC読本 vol.7でASUS社の980Ti POSEIDONを使わせていただいたのですが、紙面と締め切りの都合上、取得したデータを全部使いきれませんでした。
現在、vol.4とvol.5の再版作業を行っているのですが、POSEIDONのデータを紙面上全て公開できていませんでしたのでblogで公開しようと思います。

とりあえず、POSEIDONの詳細をvol.7から引用して紹介します。

POSEIDONはR.O.G.ブランドで展開されているASUS社のビデオカードです。ベースクロックは1114MHz、ブースト時は1203MHzに設定されているオーバークロックモデルです。
水冷と空冷の両方に対応した「DirectCU H2O」という冷却ユニットを搭載しているのが最大の特徴で、空冷時においてもメーカー公称値でリファレンスクーラーと比較して空冷時で5℃、水冷時で30℃下げることができることを謳っています。水冷ユニット取り付け口はG1/4のネジが切ってあり、ユーザーが自分の環境にあったフィッティングを取り付けることが可能です。
その他の特徴としては装着済みのアルミ製のバックプレート、側面のR.O.G.のLEDライトの明滅、ASUS AUTO-EXTREMEと銘打っている自動化された生産工程とSuper Alloy Power IIと言われる、コンデンサやチョークコイルなどの部品レベルのカスタマイズによるリファレンスモデルとの差別化
です。




バックプレート標準装備。最近装備されているカードが増えましたね

リファレンスモデルと比較して大きめのクーラーと基板
 基板サイズはリファレンスの980Tiと比べて大きく搭載可能なケースを選ぶことになります。最近のカスタムモデルは横幅も拡大される傾向にあり、POSEIDONも同様に拡幅された基板を採用しています。


空冷での使用時は通常のビデオカードと特段違う点はない

空冷環境での性能確認

まず基本性能の確認として、空冷での性能測定を行います。弊サークルでは下に記載した環境
でベンチマークを行い発熱やGPUboost によるクロックの伸びを確認しました。

CPUIntel Core i7 5960X
M/BASUS RAMPAGE V EXTREME
MemCorsair CMD16GX4M4A2800C16
CaseIn-Win X-Frame
CPU BlockEKWB Supremacy MX
RadiatorBlackice NEMESIS GTS360
Pumpaquacomputer D5 pump motor with USB and aquabus interface

aquacomputer Pump adapter for D5 pumps, compatible with aqualis base, G1/4
Reservoiraquacomputer aqualis base for pump adapters 450 ml with fountain effect and nano coating

 vol.7掲載時には空冷・水冷両方の環境でOCCTのpower supply testを30min回し、負荷をかけた状態と、その後、30分アイドルさせた後の温度を計測しました。定番の3DmarkとFFベンチのスコアを本には掲載できませんでしたので、blogで計測結果を追記しています。

 空冷で温度の変化をモニタリングしたところ、アイドル時で38℃~ 40℃ぐらいで推移し、負荷をかけたところ、GPU は84℃まで上がりブーストクロックは最大1304MHz まで上がりました。しかし発熱の問題もあり、おおよそ1250MHz前後のクロックで推移しています。80℃を基準にGPU Boost でクロックが自動調整されている結果のように見えます。リファレンスではないオリジナルクーラーを搭載していても、GPU の発熱は高く、細かくクロック制御が行われている様子がわかります。負荷試験は完走したため、通常動作は問題はありませんが連続した負荷がかかり続ける状態では80℃に近い温度で推移しますので冷却には気をつける必要があるでしょう。ブースト時にしっかりクロックが上がる性能重視のボードと見て差し支えない無いでしょう。


 
GPUの最大温度は84℃となっており発熱量は高い。
反面CPUの温度は水冷化の効果もあり45℃で落ち着いている。

1300MHzを前後に上下にクロックが小刻みに変化している。
Boost Clockの調整が走っているのだろう

空冷時スコア 14869

空冷時スコア 14920

水冷化前の準備

POSEIDON 980Tiは前述の通りG1/4規格のフィッティングが取り付けることができ、チューブの太さなど各自の水冷環境に合わせることができます。今回は検証機 であることから、フィッティングにKOOLANCE製クイックリリースタイプの、QD3-MSG4とQD3-FS10X13を組み合わせて使用し、GPU の取り付け取り外しを容易にしています。検証機のように組み合わせを頻繁に変える場合にクイックリリースは非常に有用です。
 まず、水漏 れがないかブロック単体で通水チェックを行いました。フィッティングとブロックの相性(ネジ山や、取り付け部付近のクリアランスなど)が原因で水漏れが起 こる可能性があります。今回気になったのはフィッティング取り付け部が構造上横に飛び出す形になっており、取り付け部分が薄くなっています。そのため フィッティングを締め込んだ際にOリングがうまく押さえつけられない可能性があることを考慮して通水確認を行いました。今回使用したQD3を取り付けた際 には水漏れは起きませんでしたが、新しい部品を取り付ける際にはこういった漏れが起こりそうなポイントは注意しておいたほうがよいでしょう。
  単体でのチェックで問題がなかったので、ポンプのみに通電し、循環での確認を行いました。水流が発生すると静止状態ではなかった力が接合部にかかりますの で、改めてクーラントの漏れがないか再確認します。確認が終わったら、ポンプをPCの電源に接続し、本体の電源を入れて動作を確認します。


G1/4フィッティング取付口、取り付け部のエッジが薄め

水冷環境での性能確認

起動したらまずモニタリングツールを使ってGPUが冷却されているか確認します。今回のPOSEIDONは空冷・水 冷の両対応なので仮に水冷部分に問題があっても冷却ができないことはありませんが、その他のブロックの場合は水冷部分に問題がある場合、冷却ができません ので必ず確認するようにしています。
 GPUの温度はアイドル時で30℃~33℃ぐらいの温度で推移しており、前述の空冷時より低い温度で 推移しています。この時点で熱の移動が起こっていると判断できます。その後空冷時と同一設定で負荷をかけて温度の変化を確認しました。以下のグラフを参照 ください。最大負荷時でも54℃でコア温度は安定しておりクロックも1330MHzまで上がり、ほぼ横ばいで、1330MHzを維持しながら冷却できてい ます。負荷試験中のエラー落ちもなく安定した動作をしています。メーカー公称値ではリファレンス空冷クーラーより30℃低くなるとしており、当サークルの 環境でもPOSEIDONの空冷、水冷時の比較でも30℃の差が出ており、リファレンスとPOSEIDONの空冷時でも公称値で3℃低いと謳っているた め、メーカー公称値である30℃低くなるというアピールポイントは正しい値と見て問題無いと思います。

外観からは取り付けたフィッティング以外で水冷化されていると判断できる部分は皆無

垂直にG1/4の穴があるためケース内に収めるには
角度のついたフィッティングを使う必要があるだろう。



 こちらは水冷時の3DmarkとFFXIVのベンチマークスコアです。POSEIDONの水冷化以外は空冷と同一条件で計測しています。
GPUの最大温度は54℃となっており空冷と較べて
30℃低くなっている。

1330MHzを上限にほぼ張り付いている状態。
前ページの空冷状態と比較するとクロックのブレ幅は小さい。


水冷時スコア 15054

水冷時スコア 16246

検証結果から


 ベンチマークスコアを見てみると水冷環境の方が性能が上がってい ます。これはGPUの冷却が効率化したことでGPUBoostが高クロックで安定していたことによる影響だと判断できます。GPUはPCIスロットの配置 上、構造的、発熱的に水冷化によるメリットが大きく、今回のPOSEIDONのようにクーラー交換を伴わないで水冷化が可能なことは、水冷の空冷に対する アドバンテージである効率の良い放熱と熱移動を容易に獲得することができ、水冷を初めて行うユーザーや、保証面を気にされる方への大きなメリットだと考え られます。

 水冷ブロック一体型のGPUを扱ってみた感想ですが、水冷を初めて行うユーザーで、組立に不安がある場合、GPUはPOSEIDONのような空冷、水冷両対応ユニット搭載型やブロック搭載型を選択するのは選択肢としてありなのではないかと思います。
 実測で30℃温度差が空冷と水冷の間で出ており、水冷のメリットを活かせる性能を発揮できていること、水冷部が組み込み済みのため保証の範囲内で水冷を試すことができることなどがお薦めの理由です。
  逆にデメリットを言うと、POSEIDONの場合、水冷特化のフルカバーブロックより受熱のロスがあるように見受けられます。というのもメーカーサイトに よるとGPUコア→ベイパーチャンバー→液冷パイプ→クーラントという形で熱移動しているため、間に空冷用のチャンバーを通っています。空冷と水冷の両対 応という仕様を満たすため避けれない構造なのでしょうが、受熱部そのものを冷却する水冷用ブロックよりは熱移動の効率がどうしても落ちるかと思います。ま たPOSEIDONを初めとした水冷対応モデルは製品の数がとても少なく入手性が落ちるのも悩みの種です。

 ユー ザーとして気になる点はフィッティングの取り付け位置です。今回取り付けを行う際に問題は発生しませんでしたが、GPUの側面に向かってフィッティングの 取り付け位置が固定になっていますのでSLI構成にした際にGPU間の水冷の経路の取り回しが難しくなります。ハイエンド指向の方はSLIも視野に入れて いる方がいらっしゃると思いますので、SLI対応可能な構造になっていると、より購入者の幅が広がると思います。

  ASUS社は3/5発売のMaximus VIII Formula でもEKWB製のブロックを搭載した空冷/水冷両対応モデルをリリースしました。水冷メーカーとのタイアップをメーカーが前面にだして行うことは今まで多 くはありませんでしたので、ASUS社による水冷市場への後押しには今後も期待したいと思います。



 検証時には時間も限られており、デフォルト設定での検証しか出来ませんでしたがOCを積極的に行った場合を想定しても空冷と較べて性能向上が期待できるでしょう。

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